社会人のための英語多聴で楽しく語彙力を伸ばす方法:5ステップ

勉強法
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英語のインプットから語彙力を伸ばす方法とは、英語を聴いたり読んだりすることを通して未知の単語を偶発的に覚え、語彙力を伸ばすと言う方法です。

たまたま知らない単語に触れただけで、それを覚えることができるの?とお思いの方もいると思います。答えは、、、もちろん100%可能です!それだけでなく、英語を仕事で使うには、欠かすことのできない学習法です。

この記事では、

  • 英語多聴によって語彙力を伸ばすための方法:5つの具体的ステップ
  • 英語多聴が社会人の語彙学習に必要な理由とその効果

をシェアしたいと思います。

聴くだけで語彙力を伸ばせるのか

ある言語のインプットから語彙力(ひいてはその言語の総合的な力)を伸ばす方法の究極的なものは、イマージョン教育と呼ばれる方法です。

これは例えばカナダのケベック州で行われているもので、第二言語(カナダの場合フランス語)「を」勉強するのではなく、第二言語「で」勉強することを通して大量にその言語のインプットを得て、その能力を高めようとするものです。第二言語に浸る(immerse)することから、イマージョンと呼ばれています。

単語をその言語のインプットから覚えるには、このようにずっと浸らないとできないかと言うとそうではありません。

イマージョン教育のように「浸る」まででなくても、英語をたくさん聴くことで、十分語彙力を伸ばすことはできます。

しかし、ただ闇雲に気の向いたものを流し聴いているだけでは語彙習得はできません。

適切な題材選びや未知の単語を記憶に留めておくための計画が必要です。

英語多聴によって語彙力を伸ばすための5つのステップ:全体像

英語多聴によって語彙力を伸ばすための5つの具体的ステップ

 ①題材を選ぶ

多聴で語彙力ステップ1

興味のあるものを聴く

題材には興味のあるもの、さらに言えば、続きが気になって仕方がないくらい惹かれるものを選ぶ必要があります。

なぜなら、自分の興味のある内容の方が、知らない単語を覚える確率が高まるからです。

例えば、興味のない学校の授業の内容は、一度聞いただけではほとんど内容を忘れてしまうと思います。でも、興味のある趣味のことは、たった一度聞いただけでも相当程度覚えていることができるのではないでしょうか。

面白いと思うものを聴いている方が集中して聞ける上、記憶に残る確率が高まるということです。また、面白い、悲しいと思うような感情が動いたとき、そのことは長期的な記憶に残りやすくなります。

面白いストーリー + 感情 = 長期記憶

何を聴くべきか

聴くのは、映画でもドラマでも何でも構いません。Youtubeで動画を観るのでもいいと思います。

通勤中に聴いたりするなら、Amazonのオーディブル(1500円/月)で本の朗読を聴いてもいいと思います。12万冊以上の本が聞き放題で、オフライン再生も可能です。30日間の無料体験あり。

Youtubeでは、シャーロックホームズなど著作権の切れた古典作品を朗読しているものもありますので、それもお勧めです。ストーリーを知っていればより内容が理解しやすいので、わからない!と言うストレスが少ないと思います。

検索バーに「Audio books」と入れ検索すれば、いろいろなチャンネルの作品が出てくるので、検索してみてください。

中でも、「GreatestAudioBooks」というチャンネルでは朗読した本が200ほど掲載されているので、お勧めです(リンクはこちら)。

注意すること

映画やドラマは、教科書では習わない日常的な言い回しや若者言葉、アクセントの強い話し方などが多くあるので、意外と難しいかもしれません。

また内容が医療に関するものであれば、骨の名前から内臓の働き、病気の名前や医療器具などについて、法律関係であれば、法律用語や裁判システムなどについて一通り知っていないと、知らない単語だらけになってしまいます。

専門的な用語については数が限られているので、事前に出るだろう単語を調べておくか、出てくるたびに意味を確認してもいいかもしれません。

ブログ主の私もそうなのですが、実は専門用語については日本語で聞いても知らないこともよくあるので、それは考慮に入れないで、他の知らない単語を学ぶのでもいいと思います。

ただし、専門用語を省いたことで内容が分からないと語彙学習にならないので、その点は注意が必要です。

②どのくらい理解できるか測る

多聴で語彙力ステップ2

ニュージーランドの言語学者ポール・ネーションによると、多聴で語彙力を伸ばすには、聴く単語のうち、少なくとも95%は理解できるものの必要があります。

さらに、効率的に語彙力を伸ばすには、知らない単語の意味をより正確に推測できるレベル=98%ほど理解できるものがいいでしょう。知らない単語の意味を文脈から正確に推測するためには、ほとんどの単語が理解できるもの(未知の単語は2%ほど)の必要があるということです。

それ以上知らない単語が出てくる場合は内容を理解するのが難しくなるので、聴きながら語彙を増やすのは厳しくなります。

どのレベルのものを聴くべきか見分ける方法

98%ほど理解できるものとは、1分あたり2~3の未知の単語が出てくるものになります。

聴こうと思っているものをいくつか用意し、タイムウォッチで知らない単語の数を数えながら、一分たったところで2~3の知らない単語が出てくるものがちょうどいいレベルになります。

③繰り返しのスケジュールを立てる

多聴で語彙力ステップ3

学んだ単語を記憶に残すためには、ターゲットの単語に何回も出会う必要があります。

これには2つの方法+αがあります。

繰り返しスケジュール(i)

1つは、同じストーリーを何回か繰り返し聞く方法です。

本と違い、映画などの映像作品は語彙レベルごとに細かく分けられていないため、違う作品を次々観ることででターゲットの単語にもう一度出会うのを計画するのが困難です。

そのため、ある未知の単語を記憶できる期間が1週間の場合、忘れる前に確実にその単語に次に出会うためには、同じものを1週間後にもう一度聞く必要があります。

繰り返しスケジュール(ii)

もう1つは、長いストーリー(ドラマなど)を一話ずつ聴くことです。同じシリーズであれば、同じ単語が繰り返し話されている可能性が高いからです。

繰り返し聴く以外にスケジュールすること

実際は、初めて聴いて覚えた単語を忘れないようにするために、短期間にストーリーを繰り返し聴く、または続きを聴くのは、忙しい社会人にはなかなか難しいと思います。

次に聴くまでに覚えた単語を忘れないよう、少なくとも単語だけ振り返ることをお勧めします。知らない単語が出てきたときにメモしておき、その日の終わり、三日後、一週間後などスケジュールを決めて振り返るのです。

その上で、聴くスケジュールに沿って、もう一度聴きます。

未知の単語を確実に忘れないものにするために、繰り返しのスケジュールは大変重要です。

④未知の単語を意識化する

多聴で語彙力ステップ4

多聴の基本は、聴いているもののメッセージを理解することを通して無意識に未知の単語を学ぶことです。しかし、それだけだとなかなか単語が記憶に残りません。

そこで、聴いているものが伝えようとしているメッセージ全体ではなく意識の上で単語にフォーカスする機会を作ることで、未知の単語に対する記憶を強化することができます。例えば、その単語をメモするという方法で意識することができます。

その上で、一度は未知の単語の意味を辞書で調べ、推測した意味が合っているかを確かめ、理解を深めます。

繰り返し聞いて無意識に単語を覚えることと、意識的に覚えることを組み合わせることで長期的に記憶することができるようになるのです。

⑤単語の「使用」の側面を理解する

多聴で語彙力ステップ5

ある単語がどのように使われているのかを理解するためには、違う文脈で同じ単語に何回も触れるようにすることが必要です。

これを達成するためには、長いストーリーを一話ごとに聞くのがいいと思います。未知の単語が違う場面で使われているのに繰り返し触れることで、その単語が文脈の中でどのように使われているのかがわかるようになります。

(単語の知識のうち「使用」の側面については、こちらの記事をご参照ください。)

なぜ英語多聴が社会人語彙学習に必要なのか、その効果とは

 語彙力を伸ばすと言うことが、単に新しい英単語とその訳を覚えると言う意味であれば、単語アプリなどで直接記憶する努力をした方が早くて確実です。しかし、英語を実際に使えるようになるために語彙力を伸ばすと言うことが目的であれば、英単語の日本語訳を覚えるだけでは不十分です。

単語にはその意味という側面の他、どのように使用されているかという面があり、実際にどのような状況でどのように使われているかがわからないと結局使えるようになりません。

英語をたくさん聴くことで語彙を習得すると、英語を仕事で使う上で必要な単語の意味以外の情報、例えばコロケーション(よくある単語の組み合わせ:substitute strategyではなく”alternative strategy”)や文法的情報(自動詞か他動詞かや、どのような主語や目的語が取れるかなど)も同時に覚えられるのです。

ここで、単語をいったん単語帳などで覚えたあとに、書いたり話したりする中でその単語が使える場面を探すこともできるのでは、と思うかもしれません。しかし、これは使用する中でトライアンドエラーを繰り返さないといけないため、習得までにかえって時間がかかります。また、話したり書いたりする相手がいないとできないため、独学には向いていません。

直接単語を記憶する方法と多聴と言うインプットを組み合わせることで単語の使用方法までを覚えれば、すぐにアウトプットできるようになります

このように、多聴というインプットから語彙力を伸ばすと言う方法は、覚えた単語を実際使用するためには不可欠のプロセスなのです。

(多聴を含む、英語を仕事で使うためにする語彙力増強ストラテジーについては、こちらの記事をご参照ください。)

まとめ

  • たくさん聴く方法によって語彙力を伸ばすことは十分可能です。しかし、闇雲に気の向いたものを流し聴いているだけでは語彙習得はできません。
  • 英語多聴で語彙力を伸ばす5つのステップ:(1)題材には興味のあるものを選ぶ、(2)話しの内容が98%理解できるものにする、(3)ターゲットの単語に出会うスケジュールを立てる、(4)未知の単語を意識化する、(5)単語の「使用」の側面を理解する。
  • 英語多聴による語彙習得では、単語の意味のほか、発音と使用という仕事で英語を使う上で必要な部分を学ぶことができます。そのため、直接単語を記憶する方法と組み合わせて学習することが重要です。

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参考記事
「ビジネスで英語を使うために学ぶべき単語数」(リンクはこちら
「使える英単語の学習法:社会人の語彙力増強ストラテジー」(リンクはこちら
「社会人のための英語多読で超語彙力」(リンクはこちら
「マインドマップ英単語勉強法」(リンクはこちら
「英語多読の効果:何ができるようになるのか」(リンクはこちら

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参考文献
I.S.P. Nation, Leaning Vocabulary in Another Language, Cambridge University Press, 2001.

 

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