あいまい母音は、英語の母音の中で最も頻繁に発音されるものです。
あいまい母音の役割を認識していないと、自分の想像している単語の音とネイティブスピーカーの音が違うため何を言っているかわからず、話しの内容を理解するのが難しくなってしまいます。
また、自分が話しているときにすべての母音をそのまま発音してしまうと、話しが相手に通じない可能性があります。
そのため、あいまい母音がどういうものか理解し、それを発音するのは非常に重要です。
この記事では、
- あいまい母音の発音の仕方
- あいまい母音の発音記号の由来
- 日本語にもあるあいまい母音
についてシェアしたいと思います。
あいまい母音とは
英語のあいまい母音は、A, E, I, O, Uのどの母音でもなく、でもどの母音のようにも聞こえる音です。
あいまい母音はアクセントのある音節に現れることはありません。
そして、アクセントのない母音の多くがあいまい母音になります。
ただし、例えば「Substitute」などは、アクセントのない部分にもあいまい母音がありません。すべてのアクセントのない音節があいまい母音になるわけではないということには注意が必要です。
あいまい母音の発音の仕方
教科書的な説明
教科書をみると、あいまい母音の発音は、
くちびるはリラックスして開き、舌の位置は前でもなく奥でもない中間的な位置おきながら音を発します。こうすると、「あいうえお」のどの母音の音にも聞こえるようなあいまいな音になります。
とあります。
…とても分かりにくくて、私だったら全然どういう発音をしたらいいのかわかりません。
ブログ主の理解による説明
教科書的な説明だと全然わからないので、ブログ主の理解するあいまい母音の音を説明したいと思います。
もともと母音はアクセントがあってもなくても発音されるはずです。しかし、アクセントがない母音は、音のボリュームが小さかったり短かったりして、聞き手には聞きとりにくくなります。
どうせ聞き手が聞きとりにくいのであれば、省エネ化して、ちゃんと発音しないで適当に「あいうえお」のどの音にも聞きとれるような発音をすればいいのでは?と言うイメージで発したあいまいな音が、あいまい母音になるイメージです。
具体的に言うと、
があいまい母音の発音です。
この返事、聞こえたときに「うん」だか「ええ」だか「いいえ」だかわからない、「あいうえお」のどの音にも聞こえる音にならないでしょうか。
それが、あいまい母音です。
あいまい母音の発音記号/ə/の由来
あいまい母音は、音声学でSchwaシュワと呼ばれています。19世紀にドイツの言語学者によって、ヘブライ語の無声母音を表すSchwaを借りるかたちで導入されました。
Schwaのドイツ語っぽい響きはここから来ています。
ヘブライ語のSchwaの文字をアルファベットに変換したもののひとつである「ə」が、あいまい母音の発音記号として使用されています。
「e」の逆の形をしているのでeと関係あるのではと思われるかもしれませんが、この発音記号はヘブライ語から来ているので、あいまい母音がeに近い音と言うわけではありません。
あいまい母音は日本語にもある
あいまい母音と母音弱化
あいまい母音は「母音弱化」と言う現象によっておこります。母音弱化とは、
母音がアクセントなどに応じて音が弱くなったり短くなったりすることで、弱いものに変化すること
を言います。
つまり、アクセントがない母音は音が小さく弱くなって、はっきりした発音に聞こえなくなるということです。
日本語とは違い、英語は音の強弱で言葉が表現されるので、英語ではこの母音弱化=あいまい母音化が非常によくおこることは、上でご説明した通りです。
日本語にもある母音弱化
標準語の「無声母音」は母音弱化の一種
この母音弱化(=あいまい母音化)、実は日本語にもあるのです。
日本語にはアクセントがなくすべての母音を発音するから、日本語にはこの母音弱化はないと思われるかもしれません。
しかし例えば、標準語(東京方言)や東日本の方言でおこる「無声母音」も母音弱化の一種です(関西方言ではほとんど起こりません)。
え、無声母音って何?と思われるかもしれませんので、以下で簡単にご説明します。
無声母音とは
無声母音とは、母音の「い」「う」が子音に挟まれたときや文の最後に来た時に、母音の音が消える現象をいいます。
好き、下
例えば、「好き」(ローマ字:SUKI)、「下」(同:SITA)などです。
SUKIの「U」は子音のSとKに挟まれているので、「すき」の「す」の母音「う」はほとんど発音されず、聞こえません。標準語の「すき」は「す」と「き」をそのまま発音した音ではなく、ローマ字で書いた時のSKIの発音です。
同じように、SITAの「I」は子音に挟まれているので、「した」の「し」の母音「い」はほとんど聞こえません。
です、ます
また、「う」の音が文末にくる「です」「ます」などの「す」の音は、母音がほとんどなくなります。
かきくけこ
このようなちゃんとした単語でなくても、例えば「かきくけこ」を標準語で発音した場合、「き」「く」の母音はほとんどなくなってしまいます。
日本語の場合、この母音弱化は無意識におきて、何も考えずに発音されていると思います。
しかし、特定の状況で普段自分が話している言葉にも母音が弱くなることがあると言うことがわかれば、日本人にも英語のあいまい母音も習得ができるものだと言うことがわかると思います。
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参考文献
M. Celce-Murcia, et. al, Teaching Pronunciation, Cambridge University Press, 1996.
G. Kelly, How to Teach Pronunciation, Longman, 2001.
(無声母音について)東京外語大学言語モジュール