ビジネスで英語を使うために勉強を始めようと思い立って、まず単語を覚えるところからと決めたのはいいのだけど、どのくらいの単語を知っていれば問題なく使えるのか知りたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでここでは、
- ネイティブが知っている単語数
- そのうちビジネスで使うのに必要な単語数
- 覚えるべき語彙リスト完全版
をシェアしたいと思います。
学ぶべきビジネス英語の全体像
英語ネイティブの単語数:2~3万語
ニュージーランドの言語学者ポール・ネーションによると、英語ネイティブの大人の語彙数はおよそ2万ワードファミリー(※)、また別の言語学者チャールズ・ブラウン他によると、およそ3万ワードファミリーとしています。
(※ワードファミリーとは、単語の基本形…例えばacceptに、派生形…例えばacceptable, acceptanceを加えたものを一つの単語の「ファミリー」ととらえるもの)
非常にラフな経験則として、英語ネイティブの子供は年に1,000ワードファミリーを学んでいくと言います。5歳で5,000ワードファミリー、10歳で10,000ワードファミリー、20歳で20,000ワードファミリーというイメージです。
これは、寝ている時間以外はおよそ全て、英語を聞く、話す、読む、書きながら暮らしている英語ネイティブが、特に語彙を増やす勉強をしないで、付加的に学べるのが年に1000語程度と言うことです。
ですので、学べる時間に制約がある社会人が目指すレベルとして2万〜3万ワードファミリーは目指す語彙数としては現実的ではありません。英語の語彙数を増やす勉強を特に頑張ってしたとしてもです。
さらに、仕事で利用する英単語は比較的限られているので、このレベルの語彙数をすべて学ぶ必要はありません。2万ワードファミリーは、あくまで英語で仕事する他、英語環境で本や映画を楽しんだり、友人と遊んだりと言う生活全般に英語を使うするために必要なレベルと言うことです。
ビジネスで英語を使うために基礎となる単語数:2800語
ビジネスで英語を使うためには、まず基礎となる単語を学ばなければなりません。
実は、単語はどれも同じ頻度で使用されるわけではなく、比較的高頻度で使用されるものとそうでもないものがあります。ですので、高頻度のものを基礎として押さえることで、単語については土台ができるようになるでしょう。
基礎単語のリスト
言語学者ブラウン、カリガン、フィリップスが英単語について使用頻度を調べ、それを頻度順にまとめたNew General Service List(「NGSL」)と呼ばれるリストがあります。このリストは、英単語2億7300万語を調べ、そのうち最も使用されている英単語約2800語をリスト化したもので、これで英語で書かれているテキストの92%をカバーしています。
92%のカバー率なので、この2800語で基礎はできるはずです。
2800語と聞くとかなり多いようですが、この中には冠詞、代名詞、前置詞や、Have、Take、Makeなどの基本的な動詞も多く含まれています。
また、中学高校で学ぶ英単語の数は3000程度なので、このリストにある単語はすでにほとんど習得していてもおかしくはなく、追加的に足りない部分を習得するのはそれほど難しくはないと思います。
リストはこのリンクからフリーでダウンロードすることができます(エクセルファイルです)。
基礎単語を勉強する専用アプリ
NGSLリストの単語を学べるフリーの専用アプリ「NGSL Builder 日本語版」(Android/iOS)があるので、それで知らない単語を確認しながら勉強するのがいいのではないかと思います。
フラッシュカード形式になっていて発音も学べ、学習状況を把握できる機能も付いています。
基礎単語を勉強する本
基礎単語を本で勉強したい方は、こちらがおすすめです。約4000の例文が、すべてクイズ形式で学べます。
ビジネス英語に必要な単語数:1700語
前述の通り、ビジネスでよく使用される語彙は比較的限られています。ですので、高頻度の基本単語の次はビジネスでよく使われる語彙を学べば、ビジネスシーンでは問題なく英語でコミュニケーションをとれるようになるはずです。
ビジネス英語のリスト
ビジネスで使われる単語については、上記の基本単語に加えてNew General Service Listのビジネス語版であるBusiness Service List(「BSL」)の1700語を学ぶといいと思います。
BSLはビジネスに関する書籍、新聞、雑誌、ウェブサイトの語彙6465万語を調べ、高頻度の1700語をリストにしたものです。これを学べば、一般的なビジネス英語の97%をカバーできるとするものです。
リストはこのリンクからフリーでダウンロードすることができます(テキストファイルです)。
ビジネス英語リストの検証
実際にそのリストを学ぶことで、本当にビジネス英語の単語はだいたい習得できるのかを調べるために、試しに、以前外資系企業での仕事で書いた2800語程度の英文レポートの語彙が、NGSLとBSLを足したものでどの程度カバーされているのかを調べてみました。
(テスト方法:任意のテキストの語彙レベルを調べるこのサイトで調査)。
その結果、このレポートの語彙の94.2%はNGSL+BSLのリストの語彙でカバーされていることがわかりました。ほかの同じようなレポート5点(語彙数は同程度)も調べたところ、同程度のカバー率でした。つまり、両方のリストをマスターすれば、仕事で英文レポートを書くのに支障はないのです。
カバーされていない残りの6%弱うち2.3%は固有名詞(人や会社の名前等)だったので、リストのカバー率は相当高いと言えると思います。
ですので、BSLを学べば、ボキャブラリーは英語で仕事をするのに問題ないレベルまで達することができるでしょう。
TOEIC英単語リストの検証
NGSLにはビジネス用のリストの他、TOEIC対策用の単語を学ぶリストTOEIC Service List(全部で1200語)があります。試しに、最初のレポートをNGSLとTOEIC Service Listの合計でどれだけカバーされているかを調べたところ、88.2%でした。
BSLは1700語でTSLは1200語なのでその差が表れているのかもしれませんが、ビジネスで英語を使うことを考えると、最初からBSLを覚えた方がいいかなと思います。
この記事のまとめ
- 英語ネイティブの語彙数はおよそ2~3万語です。
- このうち、ビジネスで必要とされている語彙数は、基礎となる2800語を除けば1700語です。これを学べば、外資系企業で作成された英文レポートの語彙の約95%はカバーされることが立証できたので、必要十分なものと言えます。
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「英語の語彙力測定ができる無料サイトまとめ」(リンクはこちら)
「使える英単語の学習法:社会人の語彙力増強ストラテジー」(リンクはこちら)
「社会人のための英語多読で超語彙力」(リンクはこちら)
「社会人のための英語多聴で語彙力を伸ばす方法」(リンクはこちら)
「マインドマップ英単語勉強法」(リンクはこちら)
「英語多読の効果:何ができるようになるのか」(リンクはこちら)
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参考文献
I.S.P. Nation, Leaning Vocabulary in Another Language, Cambridge University Press, 2001.
Browne, C., Culligan, B., and Phillips, J., New General Service List http://www.newgeneralservicelist.org/ (2021年9月9日参照)>