社会人の英文法の勉強法(考え方編)

勉強法
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英語の勉強をするなら、まず文法から始めないといけない。

ネイティブなら文法を勉強しなくても普通に英語ができるようになるので、文法の勉強は必要ない。

このようなことを、1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

このどちらもかなり極端で、完全に間違っているとも言えませんが、正しいとも言えません。

そこでこの記事では、社会人が英文法を勉強するにあたり、どのように考えるのがいいのかと言う視点から、以下、

  • 英語を学ぶ方法と英文法の学習
  • このサイトでお勧めする文法の勉強法

についてシェアしたいと思います。

まとめ

  • 言語の習得の多くは、インプットを理解することにより起こります。
  • メッセージを理解することによる無意識的な「習得」と、学校の授業などでする意識的な「学習」は違うものです。
  • 意識的に学習された知識を繰り返し勉強することなどによって徐々に自動化して、無意識に使えるようにすることは可能です。
  • しかし、言語の知識には、意識的には習得できないものが多く含まれているため、すべての文法知識を学習して自動化することは不可能です。
  • 英文法の勉強の際、文法の習得要素に一定の順番があることが研究で分かっています。
  • 勉強していくうえで早期に習得できるものと、ある程度英語の蓄積がないと習得できないものがあると言うことです。
  • つまり、意識的な学習によって学ぶとしても、文法は参考書に書いてある順番通りに覚えられるわけではありません
  • このサイトでお勧めする文法の勉強法は、言語の習得の多くはインプットを理解することにより起こると言う考えに基づいています。
  • そして、インプットとアウトプットの両方をすることによって、無意識に文法を習得することに加え、意識的に学習した知識の自動化を促し、それを使えることを目指すものです。

英語を習得する方法

最新の第二言語習得論の科学的知見によると、言語の習得の多くは、インプットを理解することにより起こります。

英語を学ぼうとする場合は、英語の意味=メッセージを理解する、つまり読んだり聞いたりするインプットが言語習得を進めるうえで絶対に必要な条件です。

英語を学ぶ方法:習得と学習

言語の習得と学習とは

言語を習得する方法には、

(1)メッセージを理解することによる無意識的な「習得」と、
(2)学校の授業などでする意識的な「学習」

と言う2つに大きく分かれます。

そして、無意識的な習得と意識的な学習は、基本的に別のものです。

学習と習得の違い

ことばを使用するときは、私たちはかなりの部分を無意識のレベルで行っています。

例えば、日本語で何か話そうと思ったときに、文章で「が」を使うか「は」を使うかについて考えたことはないと思います。それでも、ことばはどんどん自然に出てきます。

これに対して例えば、英語の三人称単数現在形に付く‐Sは知識としては簡単なので、理解はすぐできると思います。それなのに、実際に英語で話したり書いたりするときに、なかなか正しく使えないということはないでしょうか。

言語学者のS.クラシェンによると、私たちが三人称単数現在形をきちんと使えないのは、これが意識的に「学習」した知識だからで、本当の意味で「習得」されたものでないからだとしています。

意識的に「学習」したものは、正しいかどうか注意しているとき(=時間をかけて正しいかどうか考えながら書いているときなど)にしかできないとするのです。

なるほど、そうか!

と思われる部分もあるのではないでしょうか。

知識としてはわかっているけど、腑に落ちていないと言うか、ちゃんと身に付いていない、と言うような感覚です。

そして、無意識的な習得と意識的な学習は全く別のものなので、学習された知識が練習によって習得に変わることはない、とクラシェンは言います。

知識の自動化

しかし、意識的に学習された知識が徐々に自動化されて使えるようになったという経験、つまり学校で勉強したことが習得されたかのように、無意識に使えるようになったと言う経験はあると思います。

そうでなければ、今まで学校などで学習してきた英語は、じっくり考えなければ全く使えない状態のままと言うことになってしまいます。

意識的に勉強したことも、無意識に使えるようになるです。

そうであれば、この自動化プロセスで、意識的に勉強した知識を繰り返すことなどによってすべて自動化すれば、英語を使えるようになるのでは、と思うかもしれません。

しかし、この自動化には問題があるのです。

言語の知識には、意識的には習得できないものが多く含まれています。

実際、文法知識の多くは、普通に英語を勉強しようとする私たちには説明されてもわからないものです。複雑なため、言語学者さえもきちんと説明できないものもあります。

文法の参考書の前で、

何を言っているか、全然わからない…

と思ったのは、当然だったのかもしれません。

文法書の何ページも使って説明するようなルールを、私たちが最初から意識的に理解して、それをさらに繰り返し使いながら自動化するということはなかなか難しいですし、ほぼあり得ないと言えます。

英文法の意識的な学習

つまり、英語の文法を意識的に学習することによって習得しようするとすると、以下のようになります。

文法のルールを(全て)学習しなければならない

英文法のルールのすべては、人類にはまだわかっていません

そして、知っているものだけをすべて勉強したとしても全部理解できるとは限らず、理解したもののすべてを覚えるのも困難です。

また、一度頭で覚えたものを覚え続けているのも難しいです。

英語を使うときに、文法のルールについて考えないとならない

聞いたり話したりしているときは通常、相手の言っていること=メッセージを理解し伝えようとしています。その間に、さらに文法について考えるのは非常に難しいです。

文法のルールを知識から適用して使うには、時間が必要

実際に聞いたり話したりしているときに、文法のルールを知識から適用する時間はありません

このサイトでお勧めする文法の勉強法

仕事で英語を使うには、完全に無意識に使えるようにならないまでも、文法について考えずに、ある程度正しい文法が自然に出てくるようにしなければなりません。

このサイトでお勧めする文法の勉強法は、言語の習得の多くはインプットを理解することにより起こると言う考えに基づいています。

そして、インプットとアウトプットを両方することによって、文法の無意識の習得に加え、意識的に学習した知識の自動化を促し、それを使えることを目指すものです。

文法は参考書に書いてある順番通りに覚えられない

英文法の習得には一定の順番がある

母語(この場合日本語)の文法の習得には、ある一定の順番があることが知られています。聞いたもの、教えられたものから順に覚えていくと言うわけではありません。

そして、英語の習得の際にも、日本語習得と同じで、文法の習得要素に一定の順番があることが研究で分かっています。つまり、勉強していくうえで早期に習得できるものと、ある程度英語の蓄積がないと習得できないものがあるのです。

日本人の英文法の習得順序

  日本人の英語学習者を対象とした研究では、おおよそ次の順番で文法を習得していくという結果が得られています。

1. Be動詞(連結:”主語は~です。”の「は」のような役割のbe)
2. 進行形(~ing)
3. 所有(’s)
4. Be動詞(助動詞:”This must be great.”のbe)
5. 複数(-s)
6. 一般動詞(不規則過去)
   不定冠詞(a)
8. 三人称単数現在
9. 一般動詞(規則過去)
10. 定冠詞(the)

白畑知彦編「英語習得の常識非常識」、大修館書店、2004年、25PG

他の多くの研究結果から、日本人英語学習者は所有の習得が早く、冠詞の習得が遅いことが指摘されています。

冠詞は日本語にはない概念なので難しい一方、所有は日本語に置き換えたとき、私の~、とか、あなたの~、のように、何となく理解しやすいからかもしれません。

英文法は参考書に書いてある通りに習得できるわけではない

 この研究から分かることは、参考書で初めの方の章に出てきたからと言って、その習得が早い段階でできるとは限らないと言うことです。

また、基本的な構造の習得は早く、複雑な構造は習得が遅くなるということもないようです。

さらに、各要素の出現頻度を高めたり、強調して教えてもらったりしても、習得順序にはほとんど関係ないと言われています。

実際に文法を勉強するときに気を付けること

上記のことから、まず、文法の勉強をするとには、おおよそ上の順番に従って学習が進むことを知っておくことが重要です。

そして、参考書の説明を読んでも理解できないような難しい(と思うような)文法は、とりあえず無視しても構いません。自分の理解の到達度がそこに達していないと、いくら勉強してもわからない、わかったと思っても結局身に付かないと言う可能性があるからです。

時間投資対効果を考えると、そこに時間をかえけるのは無駄になる確率が高いのです。

とりあえず読んでわからないところは置いておいて、インプット、アウトプットを経た後に、また振り返って勉強すると言うことをした方が効率的です。

以上のことを踏まえた、社会人の英文法の具体的勉強法については、別の記事でシェアしたいと思います。

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参考文献
白井恭弘「外国語学習の科学」、岩波新書、2008年
白畑知彦編「英語習得の常識非常識」、大修館書店、2004年

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