英語の語彙力を伸ばす学習法で1番ポピュラーなのは、単語帳や単語アプリを使って目的の英単語と日本語訳を覚えると言う方法だと思います。
しかし意味を覚えただけでは、単語は実際に使用できるようにはなりません。
そこでこの記事では、
- 単語を「知っている」ということはどういうことか
- 単語を学ぶ方法にはどういうものがあるか
- 学習法のメリット・デメリット
- 使える英語を学ぶ上で効果的な学習法の組み合わせ
を紹介したいと思います。
語学力増強ストラテジーの全体像
単語を「知っている」ということはどういうことか
単語を学習する目的は何かと聞かれた場合、英単語を見てその意味が分かるようにすることを指すのではと思う場合が多いと思います。しかし、意味がわかると言うことは単語に関する知識の1つの面にすぎません。
ニュージーランドの言語学者ネーションによると、単語に関する知識は下記のように、その「意味」、「形」、「使用」の3つの側面に分けられるとします。
意味 | 意味、概念 |
形 | 単語の発音、スペル、単語のパーツの構成 |
使用 | 文法的機能、コロケーション、使用の頻度 |
英語を使うには、文を構成している単語を「知って」いなければなりません。そして、単語の知識はその意味に限られているわけではないのです。
単語を学ぶ方法にはどのようなものがあるか
単語を学ぶ方法で一番ポピュラーな方法は、単語とその訳を暗記する方法だと思います。
これを意図的学習法と呼ぶのに対し、単語を学ぶ方法には、読んだり聞いたりする中で偶発的に学ぶ方法もあります。
意図的学習法とは
単語の意図的学習法とは、単語自体を学ぶことを目的とし、それに直接フォーカスした学習をする方法です。具体的には、単語カード・単語アプリなどを用いたり、語源を学習したりする方法があります。
単語カードとは一般的に、表に英単語、裏に訳が記してあるもので、それを見て覚えるのが単語カード法です。
語源学習とは、まず単語のパーツを学び、そこから単語全体の意味をつかむという方法です(語源学習についての詳細はこちらの記事)。
意図的学習法のメリット
- 短期間に大量に学べる
- 単語の意味を学ぶことにフォーカスしているので、意味を学ぶ上では、時間と労力の見返りの点で効率的で確実
- 単語を使用するための前提条件である単語の意味、形を学べる
- 学ぶ範囲と量、記憶に残すための繰り返しのスケジュールなどを自分で制御できる
意図的学習法のデメリット
- 単語だけにフォーカスした方法は、繰り返しによっても、短期記憶から長期記憶にするのが難しい。一部は、何度繰り返しても覚えられない。
- 単語の「使用」という側面は身につけられない。単語がコミュニケーションの文脈として学ばれていないため、意図的学習法だけでは実際に使えるようにならない
偶発的学習法とは
単語の偶発的学習法とは、英語のテキストを読んだり映画を観たりするというインプットから語彙を偶発的に学習する方法です。たくさんの本(テキスト)を読んだり、映画、テレビ、ポッドキャストを聞くことで、語彙を増やすのです。
英語を読んだり聞いたりする時の主な焦点は、言っていることのメッセージを理解することにあります。そのため、この方法で学んだ単語は、適切な文脈で使用することができるようになります。
(たくさん聴くことで語彙力をアップする具体的方法については、こちらの記事をご参照ください。)
偶発的学習法のメリット
- 文脈から学ぶので、単語をすぐに使えるようになる
- ストーリーを読んで、聞いて偶発的に覚えるという方法なので、単語カードなどで覚えようと努力するより長く楽しく続けられる
- 単語が使われる文脈と単語のイメージが結びついているので、長期的な記憶につながりやすい
偶発的学習法のデメリット
- 単語の意味を覚えられたかだけをみると、意図的学習法より時間がかかる
- どれだけ新しい単語を覚えられたか把握しにくい
- 単語帳に載っているものなど、一定の範囲の限られた数の単語を覚えるのには向いていない
- 事前に学習を計画するのが難しい
使える英語を学ぶ上で効果的な学習法の組み合わせ
単語に関する知識は、その3つの側面を学ぶことで初めて完成し、実際に使えるようになります。そのため、必要な知識をまんべんなく得られるよう、学習方法を戦略的に組み合わせる必要があります。
単語の意味と形は意図的学習法によって効率的に学ぶことができるのに比べ、使用の側面は文脈からの学習になるため時間がかかります。意図的方法は語彙学習全体の四分の一以下に留め、残りの時間は偶発的学習法にあてるのがお勧めです。
偶発的学習法は時間がかかるため効率的でないようにみえますが、英語を実際に使用するためには必要な方法です。
それぞれの方法のメリット・デメリットを認識しておくことで、自分の学習している方法で何が身につけられて何が足りないのか自覚することができるので、語彙習得を効率的に達成することができるようになると思います。
まとめ
- 単語には、その形、意味、使用という3つの側面があります。
- 語彙力を増やす方法には、単語を直接覚えようとして学習する意図的学習法と、英語を読んだり聞いたりというインプットを通して語彙を学習する偶発的学習法があります。
- 意図的学習法は、意味を学ぶ上では効率的で自分で計画が立てられるというメリットがありますが、 長期的記憶にするのが難しく、単語の使用の側面が学べないというデメリットがあります。
- 偶発的学習法は長期的な記憶につながりやすく、単語をすぐに使えるようになる反面、時間がかかり、事前に学習計画を立てるのが難しいというデメリットがあります。
- 使える英単語を学ぶためには、その形、意味、使用という単語知識の3つの側面をまんべんなく学ぶ必要があります。
- 効果的な学習法の組み合わせは、意図的学習法を単語学習全体の4分の1以下、残りの時間を偶発的学習にあてることです。
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