英語が早口に聞こえるのはなぜ?

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英語が早口に聞こえる

でもこれって、

早口聞こえるだけ?
本当に早口に話している?

どうなのかわからない !

と思っている方に向けて、この記事では、

  • 英語のリズムとは
  • 英語が早口に聞こえる原因
  • 英語ネイティブは本当に早く話しているのか

についてシェアしたいと思います。

英語が早口に聞こえる原因

英語は、話す時間の長さが、音節(単語)の数よりもストレス(強勢)の数に大きく依存しています。

ストレスのかかる単語は大きく長く話される一方、ストレスのかからない単語は小さく短くなってほとんど省略されてしまいます。

この強弱が、英語が早口に聞こえる原因の一つです。

つまり、強調されない単語を短くぎゅっと詰めるために音を小さく省略することが、早口で言っているように聞こえるのです。

 このことを以下で、詳しくご説明します。

音節、ストレスとは

まず、音節とストレスとは何かについて説明します。

音節とは

音節とは、「発音される母音」を一つのかたまりとして数えたものです。母音+(いくつかの)子音の組み合わせでできる音のかたまりです。

日本語は基本的に、母音以外は一つの子音+母音で音節ができていますが、英語は一つの母音に最大7つの子音が付くことがあります。

例えば、twelfthsは母音に6つの子音が付いています。子音がたくさん付いていますが母音は一つで、音節は一つになります。

日本人には発音しにくいですね。。。

ストレスとは

ストレスのある音節とは、話されている一つの文の中で、他の音節と比較してより大きい音量、高い音程、そして長い時間で発音される音節のことです。

ここで言うストレスはアクセントと同じ感じです。

ひとつの単語の中に、アクセントのある部分とない部分があるのはご存じだと思います。例えば、「English」と言う単語は一番最初のEにアクセントがあります。

これと同じで、英語には文章の中に、ストレスのある単語とそうでない単語があります。

例えば、以下の英語と日本語の文を見てみます。

日本語と英語のストレス

英語の大文字で書いてある単語は、通常ストレスがあって大きく話される単語です。

これに対し日本語は、音の高低以外はほとんど同じ調子で話されます。

英語のリズム:ストレスと音節

音節とストレスがわかったところで、英語が早口に聞こえる原因である英語のリズムについてご説明します。

世界の言語は大きく分けて、英語が含まれるストレスタイミング言語と日本語が含まれる音節タイミング言語に分かれると言われています。

音節タイミング言語

 日本語は音節タイミング言語で、各音節(一文字一文字)の長さがほぼ同じ長さで話されます。このため、話す単語の数(字の数)が増えるほど、話す時間が長くなります。

ストレスタイミング言語

ストレスタイミング言語とは

これに対し、英語などのストレスに支配される言語は、ストレスのある音節と次のストレスのある音節の間の時間が、音楽でビートを刻むように一定の等しいタイミングになります。

つまり、話す時間が音節の数よりもストレスの数に大きく依存しています。

例えば、下の文章を見てみます。

この文章ではmice, eat, cheeseのどれにもストレスがあるので、3つの単語の時間の間隔が等しくなります。

ストレスタイミング言語で音節を増やすとどうなるか

ここで単語の数を増やしてみるとどうなるでしょうか。

実は単語の数が増えても、ストレスのある音節の数が同じなら、全体の文章は同じ時間で話されます。

例えば、先ほどの文に以下のように単語を足してみます。

MICE EAT CHEESE.
The MICE EAT CHEESE.
The MICE EAT the CHEESE.
The MICE will EAT the CHEESE.
The MICE will have EATen the CHEESE.
The MICE might have been EATing the CHEESE.

 日本語の感覚だと、下の文章になるにつれて単語が増えていくので、話す時間が増えると思うかもしれません。

しかし、ストレスのある音節はmice, eat, cheeseの3つでどれも同じです。

したがって、話すために必要な時間は、どの文章もほぼ等しくなります。

イメージにすると、こんな感じです。

列1、2、3はそれぞれ単語の数は違いますが、表の横幅が同じなように、列ごとに均等の時間で話されます。

 書いてある字の長さの違いをみると、ちょっとびっくりですね。

どのようにストレスを同じ間隔に分散しているのか

どのようにストレスのある音節を平均して同じタイミングに分散しているかと言うと、必要な時にストレスのある音節を伸ばしたり、ストレスのない音節を短くしたりして調節しているのです。

強調された音節にはより長い時間がかけられる一方、そうでないものは短くなり、母音はあいまいな音になっていきます。

つまり、上の大文字で示したストレスのある音節と音節(MICEとEAT、EATとCHEESE)を同じ時間の間隔で話すために、ストレスのない音節は母音はピュアな音を失ってあいまいな音になり、その間に短くぎゅっと詰められてしまいます。

ストレスのない音節である、

  • the はほとんど消え、
  • will は ‘ll になり、
  • will haveは ‘ll ha(ve)、
  • might have beenは might ha(ve) be(en)

※()の中はほとんどか全く聞こえなくなる

のようになります。

もちろんこれが常に当てはまるとは限らないのですが、ストレスを可能な限り均等に分散させる傾向があることは確かです。

要するに

日本語の感覚だと、語数が増えると話す時間もそれにつれて増えるだろうと思うため、ネイティブの英語は早口に話しているように聞こえるのです。

上記の通り、強調されない単語は強調される単語と単語の間に、短くぎゅっと詰められてしまいます。音節をぎゅっと詰めて言うためには音を小さく省略しないといけません。

これが、英語が早口で言っているように聞こえるのです。

英語とヒップホップ

ストレスが均等にちらばっているという英語のリズムは、音楽とも関係があります。

音楽のジャンルでヒップホップと言うものがあります。ラップなどが含まれるジャンルで、リズムや歌詞を同じ調子で繰り返す特徴があります。

ヒップホップがアメリカで生まれたのには色々な社会的文化的背景があるのですが、実はヒップホップは言語としての英語と相性が良いという理由もあるのです。

上でご説明した通り、英語はストレス(強勢)に支配されていいて、比較的同じ間隔で強く話されている単語が出てきます。

これが、リズムや歌詞を同じような調子で繰り返すヒップホップのビートにとても乗りやすいのです。

ひるがえって日本語にはこのような強弱がないので、(残念ながら)ヒップホップのビートには英語ほど乗りません。

その他の早口に聞こえる原因

英語が早口に聞こえる原因は、ほかにも考えられます。

例えば、英語を聞き慣れていない、理解するスピードが追い付いていないなどです。

英語を聞き慣れていない

 英語を聞かずに読むだけで勉強していると、自分の思っている音と実際の発音が違うことがあります。聞き取れない単語が出てくると、

わからない?どんな意味?

と、脳がその単語を探しに出かけてしまいます。その間も話しは続いていて、次々話される単語を聞きこぼすため、話すのが早い!と思うことになります。

理解するスピードが追い付いていない

また普段、英語を勉強するときに、全部日本語に訳して意味を把握していると、日本語に訳さないと意味が分からなくなります。

リスニングでは普通、聞きながら日本語に訳しつつ理解する時間はありません。英語を聞いたままわからないと、理解が追い付かない=早口に聞こえると思うことになります。

英語はほんとうに早口に話されているのか

普段話したり聞いたりしている言葉と違って、外国語を聞いて理解するのは脳にだいぶ負担がかかります。聞いたとたんに自然に意味がわかるわけではないからです。

普段使わない脳の回路を一生懸命使うことで、ようやく意味を理解できるようになります。

脳が一度に処理できる情報には限りがあるので、相手の話す速度が処理速度より上回ると、早く話しているように聞こえます。

実際、日本語に比べると、英語は必ずしも早いスピードで話されているわけではありません

フランスの研究者の論文によると、一秒あたりに話される音節は、日本語が7.84個に対して英語は6.19個です。

同じ時間話しているとすると、日本語の方が音をたくさん発していることになるので、見方によっては日本語の方が早口で話していることになります。

客観的な事実は以上なのですが、多くの日本人にとって英語は外国語なので、英語を聞きとって理解する脳の回路が十分にできるまで早口に聞こえるのは仕方ないことかもしれません。

※一音節で伝わる情報の濃さが違うため、一定の時間で伝わる情報量は英語と日本語で同じになります。

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参考記事

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参考文献
M. Celce-Murcia, et. al, Teaching Pronunciation, Cambridge University Press, 1996.
G. Kelly, How to Teach Pronunciation, Longman, 2001.

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