英語力を高めるために単語を覚えたい!でも、数が多くて覚えられる気がしない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方にお勧めなのが英単語を語源から勉強する方法です。
ブログ主の私が昔、アメリカの大学に留学するための試験対策に覚えないといけない単語の数におののき、その時に知った学習法が語源学習です(留学は種々の事情からしませんでした)。
単語の語源を学ぶことで、少ない時間でより多くの単語が覚えられるようになる、忙しい社会人にお勧めの時短学習法です。
ここでは、
- 語源学習とは
- 単語のパーツの名前とその働き
- 覚えるべき語源の数
- 語源学習のメリット
- 語源学習の注意点
についてシェアしたいと思います。
語源学習とは
英単語を語源から学習する方法とは
英単語はアルファベットが連なった一つの塊のように見えますが、実は多くの場合、意味のあるパーツに分けることができます。
語源から英単語を学習する方法とは、まず単語のパーツを学び、そこから単語全体の意味をつかむという方法です。
英単語がパーツでできているとはどういうことか
例:Demonstrate
例えば、Demonstrate(証明する)という単語をみてみます。
これをパーツに分けると、
という3つのパーツに分けることができます。
- de(完全に)
- monstr(指摘する、示す、見せる)
- ate(動詞になる接尾辞)
の意味が合わさって、
- 「完全に+示す+(動詞化)」→「証明する」
と言う意味になります。
Demonstrateと同じ語源の単語
このmonstrと同じ語源を共有する単語にmonitor(監視する、モニター)があります。見せる・示すという意味の語根から来た仲間であるのが感じられるかと思います。
興味深いことに、実はmonster(怪物、モンスター)も同じ語源を共有していて、これは「神の(恐ろしい)警告」と言う意味から現在の怪物という意味になりました。
この、パーツの組み合わせで別の意味をなす単語ができるというのは、漢字の成り立ちにも似ています。
例えば、「森」が三つの「木」からなっているように、二つ以上の文字を組み合わせ、それらの字の意味を合成して新しい意味を表す字があるのと同じイメージです。
単語のパーツの名前とその働き
パーツの名前と働き
英単語のパーツにはそれぞれ以下のように名前が付いています(そうでないものもありますが、ここでは一番複雑な形のものを説明します)。
先ほどのDemonstrateの例でいうと、
- de が接頭辞
- monstr が語根
- ate が接尾辞
です。
接「頭」辞は単語の先頭に、接「尾」辞は単語の後ろについていて、両方あわせて接辞と呼ばれます。
語根は単語のベースになる部分で、意味の中心となります。
接辞は語根に足されることにより、それを変身させる働きをします。
変身させるというのは、英単語のうち名詞,形容詞,動詞,副詞など(=前置詞や接続詞などの内容的な意味を担わない単語以外の単語)の語根に接辞が追加されると、形が変わったり内容が変化したりするということを意味します。
つまり、英単語は意味の中心である基礎となるパーツだけのシンプルな出で立ちでいることも出来るのですが、異なるパーツを身をまとうことで違う姿に変身することもできるのです。
接辞の2つの働き
接辞の 押さえておくべき大きな働きは2つあります。
1つ目は、接辞が付くことで、もとの単語の品詞の種類を変える働きです。
例えば、happy (形容詞)に「~こと」と言う意味の接尾辞nessが付くと、happinessと言う名詞に変わります。また、able (形容詞)に「~となる原因になる」というenという接頭辞が付くと、enableと言う動詞に変化するのです。
2つ目は、接辞が付くことで、もとの単語の意味を大幅に変える働きです。
例えば、happyに「~ではない」という接頭辞unを付けるとunhappy(不幸な)と言う意味に変わります。また、judge(判断する)に、「前に」と言う意味の接頭辞preを付けるとprejudge(早まった判断をする)と言う意味に変わります。
覚えるべき語源の数
覚えるべき語根の数
語根の数は単語のレベルによって違いますが(以下「語源学習の注意点1」を参照)、覚えようとする単語の数の約数分の一程度まで圧縮できる可能性があります。
覚えるべき接辞の数
これに対し、接辞の数は非常に限られていています。英語学習者が最終的に知っておいてもいい接辞の数はおよそ100ほどで、そのうち接頭辞が三分の一を占めます。数が限られているので、語源学習はまず頻出接辞を学ぶことから始めるのをお勧めします。
覚えるべき接頭辞リスト
接頭辞でよく使われるものは20ほどしかなく、それでほとんどの接頭辞が付いている単語がカバーされます。同じ意味のもの(例えばun, in, non)や、同じグループとしてとらえられるもの(例えばoverとsub)があるので、まとめると覚えやすいと思います。
✓頻出接頭辞リスト
un | 不…(否定を表す) |
re | 再び、元に |
in/ im/ il/ ir | 不…(否定を表す) |
dis | 離れて、否定 |
en/ em | 中に、上に |
non | 不…(否定を表す) |
in/ im | 中に、上に |
over | 上に |
mis | 不…(否定を表す) |
sub | 下に |
pre | (時間的に)前 |
inter | 間に |
fore | (空間的に)前 |
de | 離れて、下に |
trans | 向こうに |
super | 上に、超えて |
semi | 半分 |
anti | 反…(反対を表す) |
mid | 中間 |
under | 少ない |
com/ con/ co | 共に |
ex | 外に |
bi | 2つ |
覚えるべき接尾辞リスト
接尾辞についてはこれが頻出と言うものがあるわけではないので、リストの中から覚えた方がいいものを15ほど順不同で書きだしてみました。これ以外のものは出会う頻度が限られてくると思うので、まずは以下のものから始めるのがいいと思います。
-able/ ible | できる、しうるを表す |
-er | 人、ものを表す |
-less | ~がない |
-ation/ ion/ ition | こと、ものを表す |
-ful | 満たされた |
-ly | (副詞、形容詞に変化させる) |
-ness | (名詞に変化させる) |
-ment | (名詞に変化させる) |
-ity/ ty | (名詞に変化させる) |
-y/ cy | (形容詞に変化させる) |
-al | (形容詞、名詞に変化させる) |
-ive | (形容詞、名詞に変化させる) |
-ous | (形容詞に変化させる) |
-ize | (動詞に変化させる) |
-ify | (動詞に変化させる) |
語源学習のメリット
これまで見てきた通り、英単語はパーツの組み合わせからなり、そのパーツの数は比較的限られています。語源学習のメリットの一つは、パーツを覚えることで単語を学ぶ負担が飛躍的に軽くなり、少ない時間でより多くの単語を学ぶことができることです。
言語学者のスティーブン・バードによる高頻出英単語7476語を調べた研究では、それらの単語は約2000の語根に由来していることがわかりました。四分の一程度のボリュームです。覚える量が減ることで、浮いた時間を別の勉強に充てることができるようになります。
語源学習の第二のメリットは、個々のパーツの意味を学ぶことで、知らない単語が出てきたときにその意味をパーツから推測することができるようになることです。
例えば、Comfort(快適さ)と言う意味を知っていれば、それに否定を意味するdisがついたdiscomfortが「不快」と言う意味なのが推測できますし、できる・しうるを意味する接尾辞-ableが付いたcomfortableが「快適な」という意味になるのがわかります。
さらに、ComfortがもともとCom(一緒に)+fort(力、元気、強い)の組み合わせで「快適」と言う意味になっていることを知っていることで、Fortを共通とするenforceがen(中に)+force(強い)で強制するという意味になるのも、なんとなく想像できるようになります。
語源学習の注意点
注意点1
注意点の1つ目は、語源学習は基礎的な単語から学ぼうとする超初心者には向かないことです。なぜなら、最も高頻出の単語に多くあるゲルマン語系の語源は種類が多く、語源を全部覚えても派生して覚えられる単語が少なく効率的でないからです。
前出のバードの研究によると、最も高頻出単語のトップ1000語のうち、ゲルマン語起源は57%で、ラテン語またはギリシャ語を起源とするものは40%でした。例えばHave、Take、Make、Bandなどはゲルマン語起源で、最も高頻出の語彙では、意味の中心になる語根にゲルマン語起源が多いようです。
✓英単語頻出7476語の語源
1~100語 | 1~1000語 | 1001~2000語 | それ以上 | |
ゲルマン語 | 97% | 57% | 39% | 36% |
ラテン語 | 3% | 36% | 51% | 51% |
ギリシャ語 | 0% | 4% | 4% | 7% |
(出典:Table 8.1 from I.S.P. Nation, “Learning Vocabulary in Another Language”, Cambridge University Press, 2001)
つまり、基本語を最初から勉強しようとしている超初心者には向かないのです。
しかし、1000語~2000語レベルではそれが逆転し、ゲルマン語起源が39%、ラテン語・ギリシャ語起源が55%になります。難しい単語(より低頻度)になるほどラテン語・ギリシャ語起源のものが多くなり、また語源の数も比較的限られているため、語源学習は最も基本的な単語を学んだ後にラテン語・ギリシャ語起源のものを中心にするのがおすすめです。
注意点2
注意点の2つ目は、覚えようとする単語群が知らない単語のみの場合、語源から意味を覚えるのが簡単ではないことです。
例えば、Flood(洪水)、Fluctuate(変動する)、Influence(影響する)の3つの単語のうち、Flood(洪水)を知っているとします。
Fluが流れるという意味であることからFloodは洪水と言う意味になるということがわかると、Fluctuateは「(流れるように)変わる」ことから変動する、Influenceは「(体の)中に(何かを)流す」イメージで影響するという感じで、覚えやすくなると思います。
しかし、この単語のうち一つも知らないと、Fluが流れるというイメージをまず覚え、それから単語を覚えることになるので、イメージが最初からある時より覚えにくくなります。
この場合、語源から覚える方が効率的に単語を覚えられるということには変わりませんが、単純に覚えやすいとは言えません。
注意点3
また第3の、特に語源学習後の注意点として、似ている単語のパーツを同じ語源だと思って、意味の推測を誤ることがあることを知っておくことは重要です。
接辞の形が大幅に変わることはあまりないのですが、単語の意味の中心になる語根は、それが英単語に入れられたときに一部しか入らなかった、スペルが時代とともに変化したなどして元の形と変わり、違う語源のものと見分けがつかなくなることがあります。また、もともと語源が似たスペルの単語だったという場合もあります。
例えば、complete(完了させる)という単語がcom(一緒に)+plete(満たす)と言う語源から来ていることを学ぶとします。「plete」は「pli」となったりもするので、次に似た単語のcomplicateを見たときに、com(一緒に)+plic(満たす?)+ate(動詞にする接尾辞)だからcomplete(満たす)と似た意味になるはず、と推測するかもしれません。
しかし、complicateの「plic」はCompleteの「plete」とは別の語源で「折り畳む」というものからきており、com(一緒に)+plic((事態を)折り畳む)+ate(動詞にする接尾辞)から、複雑にするという意味になるのです。
語源学習は非常に有効な方法ですが、知らない単語を間違いなく推測できるとは限らないと知っておくのは有用です。
ブログ主の失敗談
これらの注意点、特に2つ目と3つ目はブログ主である私も陥ったものなので、特にシェアしておきたいと思います。
留学するための試験勉強のため、単語を大量に素早く覚えようと語源学習を始めたのはよかったのですが、知らない単語だらけで語源のイメージがわかない…とか、時短しようと思ってズルして途中をすっ飛ばし、同じ語源だと思ったものが違うものだった…という間違いをしました。
また、ゲルマン語系の語源も当初覚えようとしていたのですが(低頻度の単語にもそれなりにあります)、途中で数が多くて時短にならないと気づきました。
これから語源学習を始めようとしている方はこれらの注意点を知っていることで、より効率的に単語を学ぶことができるのではないかと思います。
まとめ
- 語源から英単語を学習する方法とは、まず単語のパーツを学び、そこから単語全体の意味をつかむという方法です。
- 英単語は大まかに、語根と接頭辞・接尾辞(合わせて接辞)というパーツに分けられます。
- 語根の数は、覚えるべき単語の数分の1まで圧縮できる可能性があります。
- 最終的に覚えるべき接辞の数は100ほどで、そのうち頻出接頭辞は20ほどです。
- 語源学習のメリットは、記憶する時間の短縮がはかれること、また知らない単語の意味を推測することができるようになることです。
- 語源学習の注意点は、基礎的な単語から学ぼうとする初心者には向かないこと、覚えようとする単語群が知らない単語のみの場合、語源から意味を覚えるのが簡単ではないこと、また意味の推測を誤ることがあることです。
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「社会人のための英語多聴で語彙力を伸ばす方法」(リンクはこちら)
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参考文献
I.S.P. Nation, Leaning Vocabulary in Another Language, Cambridge University Press, 2001.