大人になって英語の勉強を再開したけど、受験の時の、文法の問題を解きまくるみたいな勉強法は必要なのだろうか
このような疑問を持つ方のために、この記事では、
- 社会人の英文法勉強の考え方
- よくある文法勉強の方法と、それが社会人の英文法の勉強に必要がない理由
についてシェアしたいと思います。
社会人の英文法勉強の考え方
これからご紹介する
- 文法問題を解きまくる勉強法
- 文法を他人に説明できるようにする勉強法
などの、よくある英文法の勉強が必要ないとするのは、以下の認識に基づいています。
- 言語の習得の多くは、インプットを理解することにより起こります。
- メッセージを理解することによる無意識的な「習得」と、学校の授業などでする意識的な「学習」は違うものです。
- 意識的に学習された知識を繰り返し勉強することなどによって徐々に自動化して、無意識に使えるようにすることは可能です。
- しかし、言語の知識には、意識的には習得できないものが多く含まれているため、すべての文法知識を学習して自動化することは不可能です。
- 英文法の勉強の際、文法の習得要素に一定の順番があることが研究で分かっています。
- 勉強していくうえで早期に習得できるものと、ある程度英語の蓄積がないと習得できないものがあると言うことです。
- つまり、意識的な学習によって学ぶとしても、文法は参考書に書いてある順番通りに覚えられるわけではありません。
注意すること
文法の勉強は必要です
これからご紹介する英文法の勉強法はお勧めできないのですが、どのような文章が正しいのかを知る必要はあるので、全く文法の勉強が必要ないと言うわけではありません。
以下の勉強法は、試験勉強には役に立つ可能性があります
以下のものは、社会人として英語を仕事で使えるようにするための文法の勉強としては必要がないと思われるものです。何らかの試験のために必要な勉強をするのであれば、役に立つ可能性はあります。
こういう文法の勉強は必要ない
とにかく文法書を最初のページから読み込んで、理解する
文法書を最初のページから読み込んで理解する勉強法とは
典型的なものは、以下のようなものです。
文法書を一ページ目から読む→その章の問題を解く→理解出来たら次の章に進む
と言うような勉強法です。
なぜ文法書を最初のページから読み込んで理解する勉強が必要ないのか
英語を習得するときには、文法の習得要素に一定の順番があることが研究で分かっています。つまり、勉強していくうえで早期に習得できるものと、ある程度英語の蓄積がないと習得できないものがあるのです。
参考書で初めの方の章に出てきたからと言って、その習得が早い段階でできるとは限らないと言うことです。
第一章から順々に理解して、その後次の章に進もうとしても、自分の文法の習得の到達度が達していないと、いくら勉強してもわからない可能性があるので、この勉強法はお勧めできません。
文法の問題を解きまくる
文法の問題を解きまくる勉強法とは
典型的なものは、以下のようなものです。
問題を解く→間違えたところに印をつける→印がついたものを解き直す→また問題を解く
と言うような勉強法です。
なぜ文法の問題を解きまくると言う勉強が必要ないのか
文法の問題を解くのは、「正しい言語形式」を認識するためにするものです。
文法の構造つまり、その言語の形態や配列を問題を解くことで学習し、学習したことを繰り返すことで自動化して、文法を無意識に使えるようにすることを目指しています。
しかし、この知識の自動化には問題があります。
「社会人の英文法の勉強法(考え方編)」と言うこちらの記事でもご紹介した通り、言語の知識には、意識的には習得できないものが多く含まれています。また、文法知識の中には複雑なため、言語学者さえもきちんと説明できないものもあります。
と言えます。
文法の問題を解きまくる勉強法が、試験対策に有効な理由
通常の試験では、1つの問題に対する正解が1つしかありません。
この正解は、試験の範囲内での「正しい言語形式」を学習すると、導き出すことができるようになっています。
ですので、試験問題をたくさん解くことで「正しい言語形式」が何かを学ぶと、正解がわかると言うことになります。
英文法を他人に説明できるようにする
英文法を他人に説明できるようにする勉強とは
典型的なものは、以下のようなものです。
英文法の本を熟読し、隅々まで理解して、わかったことを他人に説明できるようにする
と言うような勉強です。
なぜ英文法を他人に説明できるようにする必要がないのか
なぜ他人に説明できるように文法を勉強する必要がないかと言うと、文法を「理解」していれば、英語を使えるわけではないからです。
ここで言う「理解」は、英語の言語形式である「文法の構造を理解」していると言うことを意味します。
文法書を読み込んで構造を説明できたとしても、必ずしも、英語の内容=メッセージとしての意味がわかって、それを説明できるようになるわけではありません。
英文法を他人に説明できるようにする勉強が試験対策に有効な理由
他人にどのくらい説明できるかで、文法の構造を理解できているかを測ることができます。
文法の構造=正しい言語形式を他人にきちんと説明できるくらい理解していれば、問題の正解にたどり着けるだろうと言うことです。
文法問題の正解の理由を知る
文法問題の正解を知る勉強法とは
典型的なものは、以下のようなものです。
文法問題を解いて英文法の知識を確認するときに、なぜその答えが正解なのかを考える
と言うものです。
なぜ文法問題の正解の理由を知る必要がないのか
文法を他人に説明できる必要がないのと同じように、試験の範囲内の「正しい言語形式」の理由を理解しているとしても、英語を使えるわけではないからです。
文法規則がわかれば、文法的に正しい文は作れますが、社会的な場面に適切な伝達文(メッセージ)を創り出すことはできません。
コミュニケーションとは、自分の伝えたいメッセージを伝え、相手のメッセージを受け取ることです。これには、知っている単語を文法で組み立てて発音するだけでは足りないのです。
文法を覚えるために暗唱する
文法を覚えるために暗唱する勉強とは
典型的なものは、以下のようなものです。
「関係代名詞とは、代名詞の機能と関係節の表示をあわせもつ働きをします。例えば~と言う文章で使います。」と言う、文法の要素の説明を暗記する
と言うような勉強です。
なぜ文法を暗記するのが必要ないのか
文法の要素の説明を覚えても、英語を使うときに役に立たないからです。
確かに文法の知識を覚えていると、何が正解か確信がないときに、知識を活用して正しいものがわかります。
しかし、文法知識は無数にあるので全部覚えるのは不可能です。さらに、正しく記憶されていないと使えません。
そして、知識を用いる時間がある時にしか使えないので、普通に話したり聞いたりしている時には役に立ちません。
文法の知識を暗記する勉強法が、試験対策に有効な理由
試験問題の正解は、試験の範囲内の文法の知識を覚えていると、導き出すことができるようになっています。
試験時間には通常、正解が何かを考える時間があるので、文法の知識を暗記して、それを思い出すことができると、正解がわかると言うことになります。
文法の構造を理解する
文法の構造を理解する勉強とは
典型的なものは、以下のようなものです。
参考書で英文法を勉強するとき、「文型」や「品詞」といった視点で英文を整理し、どのような構造になっているか理解する
と言うような勉強法です。
なぜ文法の構造を理解する必要がないのか
文法の構造を理解することと、英語を使えるようになることは、全く別物です。
ここで言う文法の構造を理解すると言うのは、言葉を分解し分析した「知識としての文法」を理解すると言うことです。これは、言葉の意味を理解し、書いたり話したりするときに必要な、無意識に取り出せる「習得された文法」とは違います。
意識的な学習と無意識的な習得は基本的に別のもので、文法の構造を理解するために時間を費やしても、それがそのまま無意識的な文法の習得にはつながらないのです。
仕事で英語を使うには、完全に無意識に使えるようにならないまでも、文法について考えずに、ある程度正しい文法が自然に出てくるようにしなければなりません。
文章がどんな構造なのかを理解しても、残念ながら、正しい文法が自然に出てくるようにはなりません。
文法用語を覚える
文法の要素の名前(分詞構文、過去完了など)を覚えると、疑問に思って調べる時に時間がかからないので便利ですが、知っていても英語を使えるようにはなりません。
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参考記事