文法の勉強、気が進まない…
私もです。
学校の英文法の教科書は、難しいしつまらなかったですよね。
このサイトでお勧めする文法の勉強法は、学校で勉強した方法とは違い、
- たくさん読んだり聴いたりし
- その上で、書いたり話したりする
と言うプロセスの中で、文法を学ぶと言う方法です。
でも具体的にどうすればよいのかわからない、と言う方のために、この記事では、
- 社会人が英文法を勉強する方法の、具体的5ステップ
をシェアしたいと思います。
英文法を勉強する5つの具体的ステップ:全体像
英文法を勉強する5つの具体的ステップ
①インプットの題材を選ぶ
必要なものは以下です。
- 英語で読むもの
- 英語で聴くもの
- 英語の文法書
興味のあるものを読む・聴く
読むもの・聴くものの題材は、興味のあるもの、さらに言えば、続きが気になって仕方がないくらい惹かれるものを選ぶ必要があります。
なぜなら、自分の興味のある内容の方が、文法を習得する確率が高まるからです。
自分が面白い、悲しいなどの感情が動いた時、記憶は長期的に残りやすくなります。
何を読む・聴くべきか
興味のあるものであれば、小説、雑誌、映画、Youtubeなど、何でもかまいません。
ただし、日常のカジュアルな会話がほとんどのものは、文法学習の一部に留めるのが無難です。文法的には正しくないけれども、日常会話では許容されるものもあるからです。
文法書
文法書は、以下の、
- 中学・高校英語をカバーした、最後まで読む気力が続くような簡単なもの
- 辞書的に使える文法書
の2冊を用意します。使い方については、以下でご説明します。
文法の問題集は必要ありません。
②どのくらい理解できるか測る
どのくらい理解できるものが適切なのか
インプットは完全に理解できるもの、もしくは自分の理解レベルよりも簡単なものを選びます。これなら、ある程度余裕をもって入ってくる情報を処理できるため、情報の意味(メッセージ)だけでなく、文法の形式や機能にも注意を向けることができます。
英語学習者向けに、構文、語彙、ページ数などをもとに本をレベル(グレード)分けしたGraded Readers (グレイデッド・リーダーズ)であれば、比較的簡単に自分のレベルに合ったものが選べます。
③スケジュールを立てる
文法学習のスケジュールは、以下になります。
簡単な文法書を読んで勉強
最初に、簡単な文法書を一通り読んで勉強します。これは次のステップの、文法の意識化=「気づき」を促すためにするもので、文法書を読んで文法を習得するためではありません。
文法書を読むのは、
- ただ読んだり聴いたりしていているだけでは気づかない、例えばaとanの区別などを気付かせ、自然な文法の習得を促進する
- アウトプットをしたときに、その正しさをチェックできるようにする
ためです。
文法書を読む時には
読んでいる文法の項目で、それでどういうメッセージが伝えられるのか、と言う観点で読むことが重要です。
文法の勉強法としてよくある、文法書を最初のページから読み込んで、理解してから次の章に進むような勉強法や、文法の問題を解きまくると言うような勉強法は必要ありません。
インプット
英文法の学習に、読む・聴くと言うインプットが必要な理由は、次の2つです。
- 言葉を習得するためには、意識的な学習だけでなく、インプットが不可欠なこと
- インプットによって英語の回路(予測文法)を作ること
インプットをするときには
文法書を読むときとは逆に、読んだり聴いたりするときは、伝えたいこと=メッセージを理解すると同時に、どのように伝えているのか(文法)についても注意を払うようにします。
インプットの途中で疑問に思ったところは、辞書的に使える厚い文法書で調べます。不思議だな、知りたいなと思った文法に対する疑問を解消し、その中で文法に関する記憶の定着をはかります。
「①インプットの題材を選ぶ」でも述べた通り、興味を持ったことの方が、はるかに記憶に残りやすくなります。
分厚い文法書を、
面白くない。。。
と思いながら勉強するより文法に対する理解が進み、記憶にも残ります。
と言うルーティンを目指します。
調べるのにインターネットは使用しない
文法で疑問に思ったことはインターネットで検索する方が早いのですが、必ず本(電子書籍でも可)を使用します。
インターネットの情報は玉石混交で、正しくないものもよくあります。例えば英語に関する情報で正しい/間違いとされているものの中でも、
- スタイルの問題(句読点など)
- イギリス英語とアメリカ英語の違い
を考慮していなかったり、単に間違えているものもよく見られます。間違った知識で勉強するのは意味がないですし、どれが正しい情報なのか調べるのも時間がかかります。
出版されている本であれば専門家が検証しているはずなので、それで学べば問題なく学習が進みます。
アウトプット
十分にインプットができたら、次は書く・話すというアウトプットに移ります。
書く・話すと言うアウトプットが必要な理由は、
- 自分の英語能力の穴に気づく
- 文法の理解と定着を促す
- 知識の自動化を(ある程度)促す
の3つです。
アウトプットをするときには
意味(メッセージ)のあるアウトプットをする
ここで言う文法の勉強をするためのアウトプットとは、自分の伝えたいメッセージを伝えるために、話したり書いたりすることです。オンライン英会話で話したり、日記を書いたりなどの方法が考えられます。
よくある、学びたい文法表現が入った例文を少しずつ変化させながら、繰り返し練習すると言うようなパターンプラクティスは、メッセージを伝えるのためのアウトプットではないので、文法学習にはふさわしくありません。
また、音読やシャドーイングも、自分のメッセージを伝えるためのアウトプットとは違うので、ふさわしくありません。
文法へ注意を払う
伝えたい内容と共に、その内容をいかにして伝えるか、具体的な言語形式や文法にも注意を向けます。
話す・書くアウトプットの両方をする
何かを書く時には通常、書くことについて考える時間がありますが、話す時はその瞬間にアウトプットをしなければならないため、じっくり考えている時間はありません。また、話す時には許される文法の「間違い」も、書く時には許されないものもあります。
全体的にバランスの取れた英語の運用能力を目指すためには、話す・書く両方のアウトプットが必要です。
アウトプットに時間がかかる場合
アウトプットをすること自体に多大なストレスと時間(数行を考えるのに10分以上かかるなどの場合)は、まだインプットが足りていないので、無理にアウトプットに進む必要はありません。
文法学習にはインプットとアウトプットの両方が必要なのですが、インプットが足りていない状態で無理にアウトプットしたとしても、それだけ早く学習が進むわけではありません。
スケジュールの注意
文法は自分の勉強したい順番で習得できるとは限らないので、順番を決めて1つ習熟してから次に進む必要はありません。ちょっとわからないと思ったところは飛ばして、インプットとアウトプットを繰り返しします。
サイクルを繰り返し行っていけば、わからなかった穴がどんどん埋まっていくはずです。
④文法を意識化する
ただ読み流したり聴き流したりしているだけではなかなか文法の習得が進まないので、文法を意識化する必要があります。
インプットの意識化
インプットの中から正しい文法を身につけるためには、自分の注意が特定の項目に向けられる必要があります。注意が向けられ、目から耳から入っている情報に気づいて初めて、文法を認知するプロセスが始まります。
最初に読む薄い文法の本は、この気づきを促すためにするものです。
インプットの際には、伝えたい内容=メッセージを理解すると同時に、その内容の
- 形式(どんな形で)
- 意味(どんな意味で)
- 機能(どんな場面で)
と言う、具体的な言語形式や文法にも注意を向けます。
アウトプットの意識化
アウトプットの中から正しい文法を身につけるためには、アウトプットの質を気にする必要があります。でないと、間違った文法が習得され、そのまま定着する「化石化」が起きてしまいます。
化石化とは、
間違った言葉の運用が習慣になり、簡単に修正できないこと
を言います。
例えば、以下のような間違いをいつもしてしまうような場合です。
It bring me joy.(正:brings)
Everyone are happy.(正:is)
化石化は、
- 一般的な文法規則を、適用できないところに汎用してしまう
- 繰り返し間違いをしていると、正しいものに感じられるようになる
などの原因からおきるものです。
これらはコミュニケーションが取れないほどの間違いではないため指摘されることもほとんどなく、間違いに自分でも気づかないことがしばしば起こります。
小さな間違いに囚われすぎるのもコミュニケーションを阻害するのですが、逆に全く気にしないと間違いが定着してしまい、そう簡単には修正できなくなります。
化石化を防ぐ方法:ディクトグロス
化石化を防ぐアプトプットとして、ディクトグロスと呼ばれるものがあります。
ディクテーションは、聞いたものをその場でそのまま書きとるものですが、ディクトグロスは、聞きながらメモを取り、その後に元の文章を復元するものです。そして、復元したものを、原文と比べて分析します。
全く同じものを復元することを目的にするわけではないのですが、文章の構成、文法(時制、句読点など)、トピック固有の語彙と内容を考慮に入れ、オリジナルに近い文章を作成する必要があります。
聞いて理解したメッセージを文法的に正しく復元することで、化石化を防ぐことができます。
(ディクトグロスの詳しい方法については、こちらの記事をご参照ください。)
⑤文法の使用の側面を学ぶ
コミュニケーションとは、自分の伝えたいメッセージを伝え、相手のメッセージを受け取ることです。これには、文法規則を用いて文法的に正しい文を作るだけでは足りず、「正しい」文がメッセージとして適切なのかを調整する必要があります。
つまり、文法規則だけではコミュニケーションには足りないのです。
例として、以下の文を見てみます。
- The brothers of my father are four.
- Your marrying me is desired by me.
- The fact that Harry could be brought by you causes me to be so glad.
白井恭弘「外国語学習の科学」岩波新書、2008年、87項、筆者改
これらの文は文法的には正しく書けているのですが、表現としては非常に不自然で、特にBとCは何を伝えたいのかを理解するのが困難です。
ABCの文を日本語に訳してみると、特にBとCはおかしいのがわかります。
- 私の父の兄弟は4人です。
- あなたが私と結婚することが私によって希望されています。
- ハリーがあなたによってここに連れてこられることができたという事実が、私をとてもうれしくさせます。
言いたいことをより自然な表現にすると、以下になります。
- My father has four brothers.
- I want to marry you.
- I am so glad you could bring Harry.
このように、
文法規則は、言語の中から規則性を抜き出して構築されたものなので、単語を文法規則にならって当てはめればコミュニケーションで通用する文が必ずできるというわけではない
のです。
文法的には正しいけれど「変な」文を作らないようにするには、多量のインプットとアウトプットを繰り返しながら、どのような文が正しく自然なのかと言う「文法の使用の側面」を学ぶ必要があります。
—–
合わせて読みたい、サイトの関連記事
「社会人の英文法の勉強法(考え方編)」(リンクはこちら)
「こんな英文法の勉強は社会人にはいらない」(リンクはこちら)
「社会人の英文法の勉強法:文法学習に読む聴く書く話す全部が必要な理由」(リンクはこちら)
「Graded Readersのおすすめ出版社一覧」(リンクはこちら)
—–
参考文献
白井恭弘「外国語学習の科学」、岩波新書、2008年
廣守友人「英語学習のメカニズム」大修館書店、2015年